2016.05.13 Friday

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2013.06.20 Thursday

ごみの仕事

縁あって、昨年からフィリピンに本部がある国際環境NGOで仕事をしている。廃棄物問題に特化した情報ネットワークで、もともとはごみの焼却への反対運動を軸にスタートした団体だ。

「ごみの焼却への反対運動」というと、日本人にはやや馴染みが薄く聞こえるかもしれない。日本では、どこの市町村でも大体ごみの約8割を焼却している(環境省平成23年度統計によれば、残る2割がリサイクルで、どうしようもない1.3パーセントが直接埋め立てられている)。海外ではごみの焼却は主流ではなく、「埋め立て+リサイクル」が基本だということを知っている日本人は少ない(詳しくはこちら「焼却大国日本」)。

ごみを焼却すると、高温の化学反応により、もともと存在しなかったダイオキシンなど多種多様な難分解性の猛毒物質が発生することが世界的に明らかになっている。日本はこの問題に対処するために、14年前にダイオキシン類対策特別措置法を作り、国中の焼却炉に高性能のフィルターをつけることを義務づけた。そのため、日本の市町村はごみ処理に巨額のお金をつぎ込んでいる。

日本のように巨額のお金をつぎ込める国はよいが、世界のほとんどの国にはそんな余裕はない。
特に発展途上国では、ごみを安全に埋め立てる最終処分場の整備すらできていない国がほとんどで、集めたごみをただただ地面にそのまま積み上げ、悪臭はもちろんのこと、有害物質が地中に漏れ出すままという恐ろしい状況がそこかしこに見られる。インドにもまだ安全な最終処分場はひとつも存在しない。

↑これは見渡す限り山脈のようにそびえる、チェンナイ郊外のごみの山

最近は、ごみの焼却の熱エネルギーを利用した「ごみ発電」が注目されており、北欧などの先進諸国で導入が進んでいる(日本は、市町村ごとの小規模な焼却炉が多いせいか、スケール効率が求められるごみ発電の導入はやや遅れている)。しかし、いかに高性能のフィルターをつけても、有害物質の排出がゼロになるわけではなく、また、フィルターで濾しとったダイオキシン入りの灰を地中に埋め立てることになるため、欧米では「焼却は危険」という見方が日本よりもずっと強い。たとえばアメリカでさえ、過去20年間、反対運動のために新しい焼却炉は1件たりとも建設されていない。

日本でもたまに「焼却炉からダイオキシン流出」のニュースを耳にするが、施設管理のもっと緩い海外諸国では、施設周辺の住民の健康被害が切実な問題となっている(たとえば中国の焼却炉を視察した友人によると、せっかくフィルターを装備した焼却炉でも、「フィルターのメンテナンスにお金がかかる&面倒くさい」という理由でフィルターを勝手に外してしまい、有毒な排気ガスがそのまま大気中に垂れ流されるという恐ろしい状況が存在するらしい)。さらに、こういった「迷惑施設」の立地は、一般的に低所得層やマイノリティ(アメリカなら黒人やヒスパニック)の住む地域に集中しており、「貧しい者がより大きな環境被害を被る」という不均衡が生じている。

我が団体は、こうした問題の是正(英語ではEnvironmental Justice―環境正義―と呼ばれる)に取り組んでいる。教育もなく、政府や巨大企業を前に圧倒的に非力なこれら弱者の人々を支援し、「戦える情報」をリサーチし、反対運動のノウハウを伝えて、勝利を勝ち取らせるのが我が団体の大きな活動の軸となっている。

ある意味「急進的」とも言える団体だが、環境運動が進んでいる欧米では自治体との協働も多く、国連組織の会議や計画作りにも草の根代表として参画したり、職員や会員が環境分野のノーベル賞と言われるゴールドマン賞を何度も受賞したり、国際的にはそれなりの信頼を築いている。けれど日本国内では、「焼却反対の過激な団体でしょ?」という色眼鏡で見られ、時には志を同じくするはずの環境団体からも敬遠されることがある。焼却が不動の既定路線となってしまっている日本では仕方のないことかなぁと思いつつも、そんな日本が口惜しい。

弱者のサポートと進歩的な環境保護運動に関わることができ、とても幸運に思っているけれど、今後は長期的に日本に定住地を求め、自分たちの思い描く、よりサステイナブルな生き方を実現したいと考えているので、日本にオフィスを持たない当団体でこの先長く働くことはできない(今もプロジェクト単位で契約を更新している)。特に環境団体の層が薄い日本では、ほかに「ここで働いてみたい」という既存の団体もあまり思い浮かばず、そもそも基本的には脱雇用を目指したいので、今後の自分の環境問題への関わり方については、今なおゆっくりと、でも真剣に考えている。何か価値ある活動のために有益な手伝いができたら、それもうれしいけれど、自分の趣向性からして、たぶん、どんなに小さな活動でも自分で生み出していくのがいちばんやりがいを持てる気がするので、非営利活動への支援がほとんど望めない日本にあって状況は厳しいけれど、葉山・カリフォルニア・インド・京都で得た数々のインスピレーションを大切に、何かしら自分たちの生き方のビジョンに落とし込める可能性を見出していきたい。願わくば、ささやかでも確かな広がりのある何かを。そして、間違いのないことを。 

2016.05.13 Friday

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