2016.05.13 Friday

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2012.03.06 Tuesday

ごみを拾って生きる人たち

エジプトで、「ごみの中に住み、ごみを拾って生きる人たちがいる」という話は、何年か前にテレビのドキュメンタリーで初めて知った。「ザバレーン」と呼ばれるキリスト教の家系で、何代にもわたって、ごみを集め、仕分けし、中から取り出したガラス瓶や缶などの有価物の売り上げで生計を立てているという。インドでも、スラムに住む大勢の女性や子供が同じような作業に従事している。エジプトのザバレーンが映画で大きく取り上げられたことで、認知が高まりつつある。

・・・そんな壮絶な現実は発展途上国だけのものかと思っていたら、何とここカリフォルニア、それもすぐ隣り町のオークランドにも厳然と存在することを知った。インターン先に誘われて見学に行った「Alliance Metals」という施設は、俗に「waste pickers」または「scavengers」と呼ばれる、ごみを拾い集める人々が、集めたごみを仕分けして、お金に代える場所だ。

人口40万人のオークランド市は、人口11万人の大学町バークレーのすぐ南に位置し、犯罪発生率が数年前に全米4位になったという問題含みの自治体。中でも、ここウエスト・オークランドは、貧困、売春、ドラッグなど、数々の深刻な問題を抱える地区として知られている。案内してくれたチヒロ・ウィンブッシュ氏は、日系の血を引く若い映画監督。Alliance Metalsを舞台に、ごみを生業とする人々の生きざまを追って、初の長編ドキュメンタリーを撮っている。「Redemption(=贖い)」と題された作品は、来年のサンダンス映画祭への出品を睨んで、目下撮影進行中だという(必見の4分間サンプル・クリップはこちら)。

彼らは、スーパーから盗んできたショッピングカートや、自分の車を使って、路上に出された市民のごみを漁る。大半は浮浪者寸前といった風貌で、その行為はもちろん、町のルールに反する。その汚れたごちゃごちゃのごみをこの施設に持ってきて、凄まじい轟音と臭気の中、まったくの素手で分別し、お金に代えられるものをお金に代える。施設のオーナーによれば、「フルタイム」でごみを集めて来れば、1日数千円から1万円近い稼ぎになるのだという。

この目で見た光景を何と形容すればよいか・・・。これが本当にカリフォルニア? 所せましとひしめき合う、順番待ちの薄汚れたセダンは、窓からもトランクからもごみがはみ出している。ふと見ると、その中の1台には、2歳・4歳・6歳くらいの黒人の3兄妹が乗っており、母親がトランクから獲得物の積み下ろしをするのを、間断ない騒音の中、お絵かきに興じながら待っている。インタビューに答えてくれたジェーソンは、子どもの時からこの仕事をしているという元ギャング・メンバー。横にいる交際相手は、元売春婦。「もう刑務所には行きたくない。ドラッグからも足を洗って、こうして社会にとってもプラスになる「資源化」という行為で生き直そうとしている。でも、ごみを拾って歩くなんて、社会からは完全な落伍者か怠け者にしか見られない。」

彼らは身体が資本だけれど、路上生活や、ごみの残飯を食べたりして、体調を崩す者も少なくないのだという。親しげに話しかけてくれた韓国出身のハヨックは、どう見ても老女なのに、上記のサンプル・クリップを見たら、まだ57歳らしい。過酷な生活条件は、人の風貌さえをも老いさせてしまうのだろうか。

彼らの生活は、複雑に絡み合う問題の上に存在している。貧困と差別。不衛生で、不安定な仕事。それでも、この仕事は、犯罪と隣り合わせの環境の中にあって、彼らに、犯罪ではない作業で生き延びる貴重なオプションを与えている。しかも、彼らの素手で徹底的に仕分けされるごみは、一般家庭による生半可な分別を遥かに凌駕し、驚異のリサイクル率にまで到達している。反面、彼らの「有価物抜き取り」は、市主導の資源化事業の採算性を阻害しており、市民のプライバシー侵害も指摘されている。

経済社会の最後に残ったカスを、同じく競争社会からはみ出た者たちが、生活の糧にしている。これを社会の醜さと呼ばずして、何と呼べるだろう。

・・・とは言え、そこには強烈な美しさもあった。特に、案内された、施設からほど近い高架下。「ほら」と指さされた先にあるのは、一目で「死者に捧げられた」と分かる花束やおもちゃ。「ここで路上生活をしていた○○のために、ローズリンが毎日、集めてきたごみの中から、まだきれいな花やおもちゃを捧げているんだ。すごいラブストーリーだろう?」 聞いた瞬間、頭がくらくらした。概念としては理解しているつもりでいた、都市の貧困問題が、取り換えの効かないパーソナルストーリーとして一気に押し寄せてきた気がした。

社会を映し出す「ごみ」に、またひとつ、忘れられない思い出をもらった。 

2016.05.13 Friday

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