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2012.02.04 Saturday

食べ残さないアジアの心

近所の台湾人二家族の合同パーティに招待された。会も終盤にさしかかったころ、ある光景に目が釘付けになる。台湾人のお母さんが、娘の食べ残したご飯をおもむろに自分の前に置き、代わりに食べ始めたのだ。

「これだ!」という懐かしさと、安堵と、こみ上げる喜びを感じて、思わず彼女に感激をぶつけてしまったら、恥ずかしそうに照れてしまって悪かった。でも、台湾人の夫たちも即座に共感してくれ、みんなで「食べ残さないアジアの心」についてひとしきり盛り上がった。

というのも、この地に来て1年半、いろいろな場でいろいろな国籍の親子と飲食をともにする機会があったけれど、「子どもの食べ残しを親が食べる」というシーンにはほとんどお目にかからないのだ。日本でも、決してすべての親が自分の子どもの食べ残しを代わりに食べるわけではないと思う。でも、代わりに食べるところまではいかなくても、少なくとも「お皿にとったものは残さず食べなさい」「食べきれないなら、そんなに取るのはやめなさい」「どうしても残してしまったら、用意してくれた人にごめんなさい」という、何とないスタンスを多くの親が共有しているように感じる。

そしてそれは、もちろんユニバーサルなものではなかった。たとえば小学校のパーティ。山ほど並ぶ食べ物。山ほど紙皿に盛りつける子どもたちと、それをまったく止めない親たち。そして大半は食べ残され、紙皿ごとごみ箱へ―。いいところがたくさんあるはずのこの国で、「アメリカって嫌な国・・・」―そう思ってしまうのは、こんな瞬間だ。

友人のアメリカ人家族のところで開かれたバースデーパーティでは、招待された子どもたちに、お母さんが手作りのカップケーキをふるまった。ケーキに群がる子どもたち。そして、手作りのケーキがいい加減に食べ散らかされ、床やごみ箱に散乱する様子に(中には一口かじっただけのものも!)、我が妻はショックで頭痛を起こしてしまった。

後日、その家族をうちに招いたら(そのお母さんはヒッピー志向で、熱心に家庭菜園までする、かなり素敵な人なのだけれど)、二人の女の子たちはやっぱり山ほどお皿に料理を盛り、半分以上は食べきれずに残し、お母さんも何を弁解するでもなかった。きっと、それは失礼でもなんでもない、ごく自然なことなのだと思う。

アメリカ人だけではなくて、ヨーロッパの家族を招待したときも、お母さんが3歳の男の子のお皿に一人前盛り付け、結局男の子は遊びに夢中で一口も食べなかった。そして、お母さんも、当然ながら、そのお皿には永遠に手をつけなかった。テーブルに打ち捨てられたピカピカのお皿と食べ物。みんなが帰ったあと、代わりに平らげる我妻―「だって、せっかく育てられた野菜に申し訳ないでしょう!」という気持ちは、この地では完全なマイノリティだ。

台湾人の家族も口々に同意してくれた―「自分たちは、食べ残さないようにと教育される。それは当然のことだと思う。世界には飢えている人がいるのだから」。オーガニックが盛んなここ北カリフォルニアでは、決して、人々のトータルな価値観が遅れているわけではないと思う。きっと、子どもを独立した別人格として捉えるような、そんな文化的な次元の違いが作用しているのかな、と勝手に想像する。韓国では、全部残さず食べてしまうのは、逆に失礼にあたると聞いたことがあるし、きっと国違えばいろいろな価値観があるのだろう。

日本だって、必ずしもみんなが「食べ物を大切にする心」を持っているわけではないはずだ。たとえば外食産業。たとえば職場の飲み会。安いチェーン店に行き、「今日は派手にいこうぜ!」とばかりに食べきれないほどの量を注文し、食い散らかす。最悪なのは「食べ放題」「飲み放題」。そこにあるのは、「食べ物を大切にする心」とはかけ離れた、集団イデオロギー的な何か。でも、あんなことができるのも、元をただせば、食べ物が安いからに違いない。誰も、一万円もするようなディナーをいい加減に食べ残したりはしないはず。粗末にされる、安い食べ物―こんな侘しいことはない。だから自分は敢えて声を大にして、「安い食べ物は嫌いだ」と大見栄を切り、これからも、大切に作られ、きちんと値段のついた食べ物を、感謝して大切に食べていきたい。「消費されるもの」としてではなく、「貴重なもの」としての食べ物の市場を、微力でも、自分の手で支援していきたい―ちょっと飛躍しすぎかもしれないけれど、そう思う。 

2019.11.08 Friday

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